遺品整理をしていたら刀を見つけたけど古美術店に持っていてもいい?
蔵の整理で出てきた古い刀を処分したいがどうすればいいか分からない
祖父の遺品で軍刀がでてきた
実家の長押に昔からかかっている槍の処分方法を知りたい
発見してから放置したままだが、そもそも刀の保管方法はどうすればいいのか分からない
こんな疑問や悩みをお持ちですか?
この記事で解説するやり方を実践すれば、誰でも簡単に遺品等の整理で見つけた刀剣類に関する疑問や悩みを解決できます。
実際に私は買取の相談などで何度も上記のようなお問い合わせを頂き、刀剣類の取扱方法を説明してきましたが、皆さん特別な問題なく手続きを行なって、疑問や悩みを解決できたと喜んで頂きました。
日本刀となると刃物の取扱になるので驚いたり、怖がったりする方もいるかもしれませんが、実際には難しいことはないので安心してください。
この記事では遺品整理や蔵の整理などで、刀剣類を見つけたときにどうすれば良いのかを解説します。
・刀剣類取扱の注意点
・登録証の有無の確認
・登録証があった場合
・登録証が無かった場合
ここでの徹底解説を最後まで読み終えれば、見つけた刀をどうすればいいのか悩む必要はありません。
刀剣類とは
まずは、刀剣類とは何かを理解しましょう。
刀剣類は、
・美術品として価値がある
・刃渡り15㎝以上の太刀、刀、脇差(わきざし)、短刀、槍、薙刀(なぎなた)
・5.5cm以上の剣、合口(あいくち)
とされています。
遺品整理・蔵の整理などで刀を見つけたら
注意点1 まずは手袋を用意しましょう。
取扱に慣れたプロは素手でも問題ありませんが、慣れていない方の場合思わぬ拍子で鞘から刀身が出てしまいけがをするかもしれません。安全のために取扱の際は手袋をしておくのが無難です。
また、安全性という意味でも手袋をすることを私は推奨していますが、素手で刀身に触れてしまう方が時々いらっしゃいます。危険であることに加えて、素手で触れることで手の油が付着し錆の原因にもなります。錆が出てしまえば当然美術品の評価としては下がってしまうので注意が必要です。美術品の価値を維持するという観点からも慣れていなければ手袋の着用をおすすめします。
注意点2 不用意に持ち歩かない
慌てて警察や古美術商に持ち込まないようにしましょう。「銃砲刀剣類所持等取締法」、いわゆる「銃刀法」では、持ち運ぶ際にもこの後で説明する「銃砲刀剣類登録証」が必要とされています。この登録証がなければ刀剣類の所持も禁止されています。
登録証の有無
登録証があるかを確認しましょう。
鞘に輪ゴムなどで巻き付けてあったり、テープでとめていたりする場合が多いです。刀袋が付属する場合は袋のなかに落ちている場合もありますので、注意して探してみましょう。貴重品と一緒に保存する人もいるので、書類等がありそうな棚やファイルなどを探してみるのもよいでしょう。
登録証があった場合
登録証は見つかりましたか?見つけたら確認すべきポイントがあります。
①登録証は原本かどうか。
コピー(複写物)は無効となりますので、かならず原本かどうかを確認してください。登録証はあったもののコピーだったというケースに何度も遭遇しておりますので注意してください。
②登録証の記載事項と現物が一致しているかどうか。
登録証の文字が読み取れるかどうかをまず確認してください。破れていても文字が読み取れれば有効な登録と認められます。登録記号番号、発行年の箇所、枠内の各事項は特に重要ですので、ここが読み取れないような状態の登録証は無効となる場合があります。
枠内の事項で現物との一致を確認するのは以下の箇所です。
長さ、反り、目くぎ穴、銘文
上記はできれば確認しておいたほうが無難な点ですが、難しいかもしれないので、各都道府県の教育委員会や買取業者に相談しても良いでしょう。
取扱に慣れていない場合は、ひとまず保留にしてもかまいません。ナカゴの銘文や目くぎ穴の確認にはやや慣れが必要ですし、場合によっては怪我をすることもあるためです。
詳しくは「刀剣類の登録証と現物が一致するかどうか確認する方法と不一致だった場合の対処法」を参照してください。
登録証がある場合は、所有者名義の変更手続きをしましょう。発見・譲渡した日から20日以内に登録証に記載された都道府県の教育委員会に「銃砲刀剣類等所有者変更届書」を郵送で提出します。
東京都や大阪府をはじめとして自治体によっては電子申請も可能です。
登録証が無かった場合
遺品整理や蔵の整理で刀を発見し、いろいろなところを探しても登録証が見つからなければ、新規に登録証を取得する必要があります。
新規登録のためのステップ
①刀剣類発見届出済証を取得
まずは最寄りの警察署に問い合わせます。
刀を発見した経緯や状況を説明できるようにしておきます。発見時の写真を残しておくと良いでしょう。
連絡後、自宅に警察が来て発見した刀を確認するか、警察署に発見した刀剣類を持参します。所轄の担当警察官の指示に従いましょう。
身分証と印鑑も必要となるのでこちらも持っていくと良いです。担当の警察官が必要事項を確認すると、刀剣類発見届済証が発行されます。この手続きは発見者本人か家族が行ないます。この時点ではまだ手数料等は不要です。
警察署に電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は注意が必要です。短刀であれば通常のバッグに収まりますが、刀の全長となると持ち運びが大変です。おすすめはゴルフバッグや釣り具のケースのような長尺の品物が収まるものに入れるとよいでしょう。無ければ風呂敷に包むというやり方もあります。ともかく合法とはいえ、電車で刀を所持しているのは普通ではありませんので、安全・安心のためにも持ち運びに注意したほうが無難です。これは登録審査会の場合も同様です。
②登録証の申請
発見届出済証を取得したら、次は銃砲刀剣類登録証の申請に進みます。
申請する自治体によって多少の違いはありますが、基本的な流れは同じです。
・「登録申請書」に記入する。
・「文化財保護担当」に提出し、審査会の予約する。
提出方法は、郵送・FAX・メール、又は東京都の場合は電子申請も可能。
・審査会当日
受付に「発見届出済証」を提出する。
登録審査手数料(1点につき6300円)を支払う。
登録審査手数料は審査の結果に関係なく返却はされません。
審査後、登録証の交付。
登録できなかった場合は廃棄となります。
ここでは大まかな流れのみのため、詳細は各都道府県の教育委員会のサイト等で確認しましょう。
登録審査の基準
登録できる刀とできない刀はどのようにして判断しているのでしょうか。
東京都教育委員会より審査基準を引用します。
【登録できる刀剣類】
ア 銃砲刀剣類登録規則により、日本刀のみが登録対象となります。
イ 日本刀とは、武用又は観賞用のために日本刀製作様式にのっとり製作されたもので、鍛錬し焼入れを施したものを言い、やり、なぎなた、矛等を含みます。
【登録の対象とならない刀剣類】
ア 著しい錆び、傷、つかれ等があるもの、製作が日本刀としての工程を経ていないもの
イ 青龍刀、サーベル等外国製であるもの
ウ 指揮刀、儀礼刀、焼入れを施していない刀剣類等
エ 変装刀剣類(仕込み杖、煙管や扇子等に仕込まれた刀剣類)
オ 鍛えがない、刃文がない、焼身の刀剣類、焼きが抜けているもの
※ 刀身が鞘・柄などの拵えから抜けないものは審査ができませんので、登録できないことがあります。
この基準から分かるように、登録対象は日本古来の日本刀の製法でつくられた美術品のみなので、西洋サーベルや青龍刀のような外国製はもとより、日本のものでもいわゆる「昭和刀」、「満鉄刀」と呼ばれる物は登録できません。
もしお持ちの刀剣類が登録対象か分からないという場合は、買取業者や古美術商に相談してみるのもよいでしょう。
こちらのおすすめの買取業者を参考にしてください。
業者は嫌だなと思う場合は、こちらの画像査定フォームからお問い合わせ頂ければ回答可能です。
再交付する
登録証がコピーだった、読み取れない箇所がある、破損している…などの場合は再交付の手続きが必要です。
登録証の発行された都道府県の教育委員会に連絡します。都道府県によって担当部署の名称は異なりますが、教育委員会で統一します。
再交付のための書類を提出
東京都の場合は教育委員会のサイトからPDFをダウンロード可能です。
「再交付申請書」
「銃砲刀剣類登録証(亡失・盗難・滅失)届出書」
再交付の場合でも審査会に発見した刀剣類を持ち込み鑑定・調査してもらいます。データと照合し、登録されている刀剣類と認められれば再交付となります。
再交付手数料は3,500円です。
審査の結果、登録原票と一致していなかった場合は、新規の登録となるので、登録申請書を提出し、新規登録手数料として6,300円が必要です。
こんな場合はどうすれば?
- 15cm未満の場合は登録証が必要?
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刀剣類の定義では15cm以上の刀、鎗、薙刀などが登録対象ですが、近年では15cm未満の刀剣類でも登録証の取得が推奨されています。
- 発見後、登録証の取得までの期限は決まっている?
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東京都の教育委員会の指示では、「発見届出済証交付後、おおむね3か月以内に登録することが目安」とされています。売却するか、所持しておくか、最終的な判断はともかくはやめの手続きをおすすめします。
- 登録審査会にいくのは本人だけ?
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審査会の日程は決まっているので仕事の都合などで出席できない場合もあると思います。その場合は委任状があれば家族など代理人をたてることが可能です。
まとめ
遺品整理で日本刀や銃などをみつけた時の対処法を解説してきました。
重要な点をまとめると以下のような内容になります。
不用意に持ち歩かない
慣れていなければ触れるときは手袋をしたほうがいい
登録証を探す
登録証があった場合は名義変更をする
登録証が無かった場合は登録証取得のための申請をする
登録証を取得した後は、自分で所有するか売却するか、どちらかの場合が多いです。
父の形見として持っておきたい、代々受け継いでいきたい、前から刀に興味があった…など、自分で大切に保管しておくのも一つでしょう。
わたしの経験上、新規で登録証を取得する方のほとんどは売却を希望しています。刀を家に置いておくのは怖い、趣味ではない、子供も興味がないので譲れない、手入れができないから保管が心配…などの理由があります。
売却の場合は、買取業者に依頼するのがおすすめです。登録証がある美術品とはいえ、刃物であることから個人間のやり取りで売買することに抵抗を感じる人が多くいらっしゃいます。
おすすめの買取業者はこちらの「刀剣おすすめ買取業者リスト」を参考に選んでみて下さい。
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